2月 192020
 

俺も中学生くらいまでかなあ・・・、「自分は将来、普通に就職して普通に結婚して普通に家を建てて普通の暮らしをする」と、「普通」に思っていた。
しかし高校に入ってからくらいから、どうも自分は他の人とは違うんじゃないか、と薄々思うようになった。何というか他人と馴染めないのだ。他人が大笑いしていることがちっとも面白いと思わなかったり、他人が興味を持っていることに全く興味を持てなかったり。当時「東京ラブストーリー」と「101回目のプロポーズ」が大流行していて皆見ていたが、俺は全く興味すらわかなかった。
それに俺は、彼女がほしいとも思わなかったし、女と仲良く話したいとも思わなかった。もちろんオナニーは毎日していたが、なぜか実際の女に興味がわかないのである。それはうちの高校がブスばかりだったというのもあるのだが、他の男子高校生が当然抱くような欲求が、俺にはなかった。
そして大学に入り、この頃になると他人を信用しなくなり、一人孤独を囲うのがライフスタイルになっていたが、一度だけ俺も彼女を作ろうとしてみたことがある。しかしこれでこっ酷い目に逢い、散々な目に遭ってからというもの、ますます生身の女に対する欲望がなくなってしまった。
もちろん性欲は旺盛で、毎日オナニーは欠かさなかったが、じゃあ風俗に行けよと言われそうだが、そういうのもあまり興味がなかった。一度だけヘルスに行ったことがあるが、時間内に出なかった(笑)ので、短絡的に「ああ女なんて別に気持ちいいもんでもないな」と思い、その後は一度も行っていない。
ただ以前書いたように、俺は痩せると俳優並みのルックスなので、痩せていた時の女が俺を見る目、そういうのは何となく自覚していた。女に興味がないから手を出しはしなかったが、生来のコミュ障である俺では、どうも女に話しかけるのも億劫だったので、結局彼女はできなかった。
そして大学を卒業し実家に戻り、適当に派遣社員やアルバイトをして、気がついたらその後は長期ニート。途中で海外にも行ったが帰国し、気がつけば40代も半ば、もう取り返しのつかない年齢だ。あと数年もすれば初老である。
けれど今の俺は、いろいろ不幸なことはあっても、毎日それなりに楽しく暮らしている。それは自分の趣味に没頭したり、買い物をして物を充実させたり、そういう些細なことではあっても、自分がそこに「小さな幸せ」を感じ取れれば、人は楽しく暮らせるということである。決して冒頭に述べたような「就職して結婚して家を建てる」ことが人生の必要条件ではないことの証左である。
確かに俺はこの先、結婚もできないだろうし子供も残せないだろう。けれど生き方は人によって千差万別だ。楽しさや幸せをどこに感じるか、それは人によって様々だし、あれがダメならこれがある、という考え方は重要である。もし一般的な人生を送っていたら、今のようにゲームやアニメやネットに没頭することはできなかったろうし、それは別の不幸である。
俺の座右の銘として「不幸であれば不幸というものを理解できるようになるし、理不尽な扱いを受ければ理不尽というものを理解できるようになる」というのがある。これは俺が考えた言葉だが、命に関わるような極端な不幸でない限り、不幸は経験すべきである。それは鉄を溶鉱炉にくべて、槌で叩くほど強くなる、というのと似ていると思う。
眼鏡のガラスレンズは傷はつきにくいが、落とすとあっけなく割れてしまう。けれどプラスチックレンズは傷はつきやすいが、落としたくらいでは割れない。果たしてどちらが真の「強さ」と言えるだろう。
俺は昔のことを考えると、腸が煮えくり返ることもある。自分の不幸を考えると、やるせなくなることもある。しかし「小さな幸せ」も確かに存在し、そこに目を向ければ、「ああ、確かに幸せってあるんだなあ」と思える。それは映画「西部戦線異状なし」のラストシーンで戦場の目の前にふと現れた小さな蝶のようなもので、映画「マトリックス・レボリューションズ」でトリニティが一瞬だけ見た青空のようなものだ。
「何をもって幸せとみなすか」というのは難しい問題である。確かに他人から見れば俺の人生は不幸だろうし、俺も自分の人生はどうですか?と問われたら不幸だと答えると思う。けれど不幸一色の人生ではない。人は「小さな幸せ」を大事にするべきだ。
そして「希望というのは、人が最後にかかる病気である」という言葉、これは身に沁みてわかる。今の俺には、パンドラの箱の底で震えているくらいの小さな希望が今でもある。これがなくなった時、俺は自動的に死ぬだろう。希望を胸にしつつ、小さな幸せと共に生きる。それが今の俺だ。果たして30年前、中学生だった頃の俺に、今の俺の現状が将来待っているんだと告げたら、絶望するだろうか?希望の反対は絶望である。

  4 Responses to “小さな幸せ”

  1. 名文です。
    自サイトの記事で引用させてもらいますね。

    • いやあ、褒めてもらって照れくさいです。
      深夜や早朝になるとセンチな文章を書きたくなってしまうもので・・・。
      こういうのも、私にとっては「小さな幸せ」ですね。
      ありがとう!

  2. 気持ちが楽になりました。
    救われました。
    ありがとうございました。

    • 私の拙い文章でそんな感想を持ってくれるなんて嬉しいです。
      多分ここに書いたことは、少なからぬ人が無意識のうちに思っていることではないでしょうか。
      世の中には不幸だけではなく幸せもちゃんとあるんだと自覚すれば、少しは生きることが楽になるかもしれませんね。
      「捨てる神あれば拾う神あり」と近いと思います。

 Leave a Reply

(必須)

(必須)